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[リレーブログ]

2019.04.24

唐津市神集島診療所
梅木 駿

そうだ 神集島、行こう。

リレーブログをご覧の皆様こんにちは。

リレー8人目を担当させて頂きます梅木駿と申します。

平成29年度に入局し,前回7人目の記伊先生の3つ下の学年にあたります。

好きな骨または筋肉はどこですか?」との質問への回答からさせて頂きます。釣り竿やバットを扱う上でリストの力は大事ですので、手根屈筋です。

 

次に簡単に自己紹介させて頂きます。

私の出身地は福岡県久留米市です。中高と佐賀県の学校に通学していた縁もあり、大学は自治医科大学の佐賀県枠で入学することができました。大学卒業後は、県との義務協定の関係で県の指定する医療機関で勤務しております。ちなみに現在までは、初期研修終了後より唐津赤十字病院→唐津市神集島診療所に勤めております。

 

〜神集島について〜

神集島は唐津沖にある7つの離島のうちの一つで、唐津市街地から見た島の形が台形のため軍艦島と呼ばれる事もあります。人口約330人程度、漁師や海女の方が多いですが、人口の過半数が65歳以上と高齢化が進んでいる島です。以前は幼稚園〜中学校までありましたが少子化のため数年前から廃校となっており、島内の子ども達は本土の小学校などに通っております。唐津市内から車で20分程度、近隣の漁港から5分程度の距離にあり、島内にはキャンプ場や海水浴場もあります。島内にある住吉神社の鳥居は海中に備え付けられており、海中鳥居として知る人ぞ知るスポットのようです。自分はやっておりませんが、背景の海も合わせると最近流行りのインスタ映えしそうな景色です。また、時期によっては海女さん達が海に潜ってウニやサザエを捕っている姿が見られるようになり、ウニの瓶詰やイカ、アジ、カマスを頂いたりと海産物に恵まれております。また、島の特産品として、石の上に落とすと石の方が割れる、と例えられるほど硬い「石割豆腐」もあります。診療所は島の漁港から30m程度の位置にあり、目の前がすぐに海で、2階の窓辺からはオーシャンビューを望めます。

 

〜診療所について〜

自治医大卒業生が基本的に2年に1度の周期で交代しながら赴任しております。自分で第20代になります。運営は医療事務1人、看護師2人と自分の4人で行ってます。他の島も含めて診療所は唐津市が管轄しており、自分も含めて働いている職員は唐津市役所の職員扱いとなります。診療所には1日平均15~20人程度の患者さんが来院し、急患や通院が困難な方には往診で対応しています。平均受診年齢も高く、60代の方でも若く感じます。日によっては診察患者の大半が80~90代で占められる事もあります。また、島内の名字の大半が前田、中村、高崎、西元、清水、岩本で占められており、診察の祭には基本的にfirst nameで呼んでます。赴任した当初に名字で呼んでしまい待合室から数人が診察室に来ようとしてザワついたことがありました。院内の設備としては、検査器具ではレントゲン、エコー、胃カメラは可能で、血液検査は午前中に検体を医師会医療センターの検査室に定期船に乗せて運べば、午後15時以降に報告書がFAXで届くようになっております。治療器具としては、牽引装置、高周波電気治療機があるので、ヘルニアや慢性腰痛、変形性膝関節症等の患者さんが牽引や電気治療をされに来られます。年間の大きな行事としては、5月から8月まで島民の特定健診を診療所で行っております。腹部エコーやレントゲン、内視鏡検査などを行い、精査が必要な症例は唐津市内の後方支援病院である済生会唐津病院や唐津赤十字病院に紹介をさせて頂いております。

定期受診の症例の内訳は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がほとんどですが、昨年度は月に数回の頻度で急患対応が必要な症例がありました。肺炎や急性心不全など比較的軽症な方から、緊張性気胸や腸管穿孔、急性期脳梗塞等の重症患者まで内科的には様々な経験ができました。搬送手段としても、基本的には漁船を使って近隣の漁港まで運び、そこから救急車に繋げる事がほとんどですが、重症例では佐賀県内のドクターヘリを要請することもありました。その際には、医療スタッフだけの力では搬送環境を整えるのが厳しいため、島の区長さんを始めとする多くの方々の力を借りながらの搬送となり、患者対応だけではなく、周囲に砂が飛ばないように水をまいてもらったり、子供や老人が近寄らないように島内放送を流してもらったり等の医学的な事以外の指示を出す必要が生じ、客観的に見ると非常にバタバタした対応になってしまいましたが、非常に貴重な経験もできました。ただ、診療所の業務だけでは経験できる整形的疾患にも限りがあるため、週に1回は唐津赤十字病院の整形外科で研修をさせて頂いております。部長の生田先生を始めとするスタッフの先生方は九州大学の医局に籍を置かれておりますが、非常に温かく迎えて頂き、外傷症例、THAやTKA、肩や膝の関節鏡、脊椎の後方除圧固定術やMED、BKP、手根管や手関節形成術など多くの症例を見る事ができ、熱心に指導して頂いております。また、年に数回ほど症例を頂いて学会発表の指導もして頂きました。

他科も含めて自分の同年代の先生達が年々臨床経験を積んでいる姿を見聞きすると、色々と思うところはありますが、今の環境の中でしか学べない事も多々あり、また知識や技術も含めて自分の臨床能力がそのまま島の医療レベルに反映されると思い、その事もモチベーションにしながら、1日1日何か一つでも新しい事を学べるように精進していこうと思います。

 

〜最後に〜

これまでの先生方と異なり、医局の派遣先ではないため、整形外科入局を迷っている方々にはあまり参考にならないかと思いますが、佐賀大学整形外科は色んな境遇の方でも暖かく迎えて頂けるという事が伝われば幸いです。

長くなりましたが、最後までご覧頂きありがとうございました。

 

それでは次の先生にバトンタッチしたいと思います。

次の先生へ。好きな骨または筋肉はどこですか?