34歳で医師になった私のキャリアは、決して一直線ではありません。私は国立大学の理学部に進学し、大学院修士課程を修了しました。基礎科学の研究に携わる中で、「知識を探究するだけでなく、その成果を直接人の人生に役立てたい」という思いが強くなり、再受験を経て医学部へ進学しました。理学のバックグラウンドで培った論理的思考力や検証する姿勢は、現在の臨床と研究の両立において大きな支えとなっています。
初期研修後は整形外科を専攻しました。運動器の機能回復を通して、患者さんの生活そのものを支えられる点に魅力を感じたからです。現在は人工股関節全置換術(THA)後の脱臼や脊椎骨盤アライメントといったテーマにも関心を持ち、日々の診療で生じた疑問を研究へとつなげています。科学的根拠に基づいた医療を大切にしながらも、一人ひとりの背景や価値観に寄り添う姿勢を心がけています。
妊娠・出産によるブランクも経験し、現在は5歳になる息子と3歳の双子を育てています。三人の子どもを育てながらの勤務は決して容易ではありません。とりわけ、子どもが急病の時、当日の外来や手術を前に「医師としての責任」と「親としてそばにいたい気持ち」の間で葛藤することがあります。仕事を休まざるを得ない現実に申し訳なさを感じる一方で、家族を守ることもまた大切な責任です。家庭の支えと医局の理解・協力により、今年ようやく専門医を取得することができましたが、同時に、こうしたジレンマを個人の努力だけに委ねない仕組みの必要性を実感しています。急な看護休暇にも柔軟に対応できる体制や、複数主治医制の導入、育児中でも研究や学会活動を継続しやすい制度設計など、支援の拡充は医療の質の維持にもつながるのではないでしょうか。
回り道や立ち止まる時間も含め、これまでのすべての経験が今の診療につながっています。研究者としての視点、母としての視点、そして臨床医としての責任。そのすべてを糧に、これからも誠実に、安心して相談していただける医療を提供していきたいと考えています。










