佐賀大学整形外科 脊椎班の平田寛人です。 今回は「この診療班を選んだ理由・やりがい」をテーマに、私が脊椎外科を専門にした理由と、日々感じている診療の面白さをお伝えします。
1. 脊椎外科を選んだ理由:圧倒的な専門性と「壁」の高さ
若い頃、外傷をはじめ様々な整形外科診療を経験する中で、最も診断に悩み、緊急の判断を迫られ、専門的な治療の壁を感じたのが脊椎疾患でした。
- 「本当に手術が必要な病態なのか」
- 「この神経症状の責任病巣はどこか」
- 「今すぐ介入すべき緊急性があるか」
画像所見だけで完結せず、患者さんの症状、神経診察、全身状態を総合して判断する緻密さ。そして、繊細な神経組織にアプローチし、除圧・固定・矯正・再建を行う手技の難しさ。
「思うようにいかず、先輩方に助けられて乗り越えた」と強く心に残る手術は、いつも脊椎手術がありました。困難だからこそ、ここで技術と判断力を磨き続けることに計り知れない価値があると感じ、この道を歩むことを決めました。

2. 常に進化し続ける分野での挑戦
脊椎外科は、進化のスピードが非常に早い分野です。
低侵襲手術、ナビゲーションシステム、ロボット支援手術、脊椎内視鏡など、新しい技術や概念が次々と生まれています。
若手時代の私にとって、脊椎外科という領域は「高く遠くに見える山」でした。しかし、その頂が高いからこそ「登ってみたい」と思えたのです。自分にしかできない治療、患者さんからはもちろん、同じ医療従事者からも頼られる「真の専門性」を身につけたいという思いがあり、その答えの一つが、私にとっては脊椎外科でした。
3. 脊椎外科医としてのやりがい
最大のやりがいは、患者さんの「人生の質」を劇的に改善できる点です。
歩行困難や激しい痛み、しびれによって仕事や趣味を諦めていた患者さんが、適切な治療によって再び自分の足で歩けるようになる。「手術を受けて本当によかった」と満面の笑顔で言っていただける瞬間は、何物にも代えがたい喜びです。
一筋縄ではいかない症例に対し、チームで徹底的に議論し、緻密な術前計画を立てて挑むプロセスそのものにも、大きな達成感があります。

4. 「脊椎×骨粗鬆症」という二つの専門性
私自身は、大学院で骨代謝について研究する機会を得たことから、現在は「脊椎外科」と「骨粗鬆症」のふたつの専門性を軸に診療・研究を行っています。
超高齢社会において、骨粗鬆症を背景とした脊椎圧迫骨折や変形、インプラント固定性の問題などは非常に重要なテーマです。単に手術を行うだけでなく、骨の状態を正しく評価・治療し、将来の骨折や再手術を防ぐこともこれからの脊椎外科医に求められる重要な役割だと考えています。
・「脊椎」を診るだけでなく、「骨」を診る。 手術だけでなく、患者さんの長期的な健康まで考える。
このトータルな視点を持てることも、この分野の大きな魅力だと感じています。
5. 医学生・研修医の先生方へ
脊椎外科は、診断・画像評価・神経診察・手術手技・術後管理・リハビリ、そして骨粗鬆症治療まで、非常に幅広い知識と技術が求められる分野です。決して簡単な道ではありません。
しかし、「専門性を高めたい」「自分にしかできない技術を身につけたい」「患者さんの生活を大きく改善できる治療に関わりたい」と考える人にとって、脊椎外科は非常にやりがいのある分野だと思います。
脊椎外科には、手術の面白さ、診断の奥深さ、研究の広がり、国際的な交流、そして患者さんの人生に深く関わる責任と喜びがあります。
少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一度脊椎班の見学にお越しください。手術室や病棟で、その奥深さと面白さを体感していただけるのを楽しみにしています。


