[リレーブログ]
2025.05.19
佐賀大学医学部附属病院
平田寛人
【インド留学記 出発準備編】 〜注射と書類と、時々インド時間〜
「また留学することになったんだよね」
「へー、先生、次の留学先はどこですか?」
「……インドです。」
そう答えた瞬間、後輩たちの表情が一瞬止まりました。ヨーロッパやアメリカのような「王道」ではなく、あえてのインド。そこには、整形外科医としての研鑽だけでなく、“常識の枠”を超えた体験が待っていると確信していたからです。
2025年春、私はAO Spine Fellowshipに選ばれ、インドへの留学が決まりました。目的は、ムンバイのBombay Hospitalでの研修。
いつかインドを訪れたいと願っていましたが、いざ現実となると、準備の段階から予想外の連続でした。
💉ワクチン地獄、始まる
インド滞在にあたり、必要とされた予防接種は以下のとおり:
- A型肝炎(3回接種)
- 三種混合(破傷風・ジフテリア・百日咳)
- 腸チフス
- 狂犬病(※これは「打っててよかった」と後日痛感することに…)
すべて自由診療。費用は合計約10万円。
刺されすぎて、最終的には看護師さんのほうが「今日はどれでしたっけ?」と確認してくるほど、常連客のような扱いに。
📄VISA申請:それは小さな戦いの連続だった
最初は気軽にe-VISAで申請。しかし数日後、メールであっさりReject。
我々研究者・医師にとって、“Reject”という単語は論文投稿の悪夢を想起させます。画面を見た瞬間、胸がキュッと締め付けられたのは私だけではないはず…(今、同業の皆様が頷いているのが見えます)。
理由は不明、返信もない。こうなると、直接行くしかない。
そして向かったのが大阪・本町にあるインド領事館(Lucid Square Semba 10F)。
Googleには「営業時間:9:00〜」と書かれていたので、朝イチで訪問。
しかし――10時を過ぎても開かない。
ここで気づきました。
そう、もうすでにそこは「インド時間」。
ようやく9時台の終盤にスタッフが出勤、そして10時を少し回ったころ、
満面の笑みで現れた領事の第一声は…
「ヘーイ、ハウアーユー?」
……ハウアーユーちゃうわ!ベリーバッドだわ!
と心の中でツッコミつつも、私は大人です。
「Very good, sir」と完璧な笑顔で応じ、今後のVISA審査に差し障りがないよう、最大限の敬意を表しました。
対応してくれたスタッフの方々は非常に丁寧で親切で、
その場で「インドに行く理由を英語で書いて」と指示されたほかは、全体としてスムーズ。
結局のところ、領事の出勤が遅いだけだったようです。
この一件で、私は日本にいながら「インドの洗礼」を早くも受けたのでした。
申請書類の提出には、レターパックプラスを使用。提出物がきちんと届くか、追跡番号を毎晩確認する日々が続きました。
🧳持ち物に悩んだ結果…
インドでは何が手に入るかわからない。そこで持参したのは:
- 整腸剤・解熱鎮痛剤・抗菌薬などの常備薬フルセット
- 日本食(レトルト味噌汁・粉スポーツドリンク)
- 日本文化を紹介するお土産セット
スーツケースの半分は薬とお土産で埋まりました。
次回予告
「出国と通信事情編:インドでどうやって日本と連絡とるの?LINEは使えるのか!?」をお届け予定です。
SIMカード問題、eSIMは?現地での通信手段、そして…「携帯が繋がらない恐怖」など、リアルな体験をお楽しみに!