[リレーブログ]
2025.07.02
佐賀大学医学部附属病院
平田寛人
【インド留学記④】チャイと笑顔と混沌と。ムンバイで“観光する”ということ
🧳観光客モード、ON。ムンバイを歩いてみた
インド生活にも少しずつ慣れてきた頃、
「せっかくだからムンバイを観光してみよう」と思い立ち、ネットで半日ツアーを予約。
迎えは8時半――のはずが、来ない。まったく来ない。
こういうとき、“とりあえず待つ”のは時間の無駄。
海外生活で得た教訓が生きます。すぐに電話をかけると、
「直前予約なので対応不可、明日ならOK」と軽やかに返されました。
これくらいで腹を立てていては、異国では生きていけません。
文化の違いと割り切って、気を取り直して近所を散策へ。
チャイ屋で地元の人と一服したり、洗濯屋や日用品店を見つけたり――
観光地では味わえない“リアルな暮らしの風景”に、少しずつ心がほぐれていきます。
🏚️ダラヴィのスラム街で出会った、誇りとチャイと笑顔と
午後は別のツアーで、ムンバイ最大のスラム街「ダラヴィ」へ。
リサイクル工場や縫製場を歩きながら、現地の生活を肌で感じました。
「ここで作った商品、フランスにも並ぶんだぜ」
「お金はないけど、笑顔はある。Welcomeだよ」
作業中のおじさんにチャイを勧められたとき、
“インド”“スラム街”“飲料”――腹痛の三大キーワードが頭をよぎります。
けれど、この好意は無下にできない。思い切って一口飲むと、素朴で美味しい。
“衛生”よりも“信頼”を選んだ瞬間でした。
ツアー中には、現地の子どもたちから何度も声をかけられ、
「ジャパニーズ!?」と囲まれて自然と写真大会が始まる場面も。
インドが日本に対して持つ親しみを、体感する出来事となりました。
🏙️市内観光とマーケットめぐり、そして“爆買い”
翌日は、ガイド付きで市内観光へ。
ガンジー博物館では、彼の生き方や思想に触れ、
「本当に現地で敬愛されている人なんだ」と実感。
エレファンタ石窟では、岩をくり抜いて築かれた神々の世界に圧倒されました。
マーケットでは、タペストリーやインド柄のネクタイを購入。
インドにしてはやや高めの価格でしたが、ダラヴィでの経験を経た今、
「このお金が誰かの暮らしにつながるなら」と思うと、不思議と財布のひもが緩んでいました。
👵誕生日ビリヤニと、手ぬぐい外交
帰宅後、ルームメイトとZomatoで夕食を注文しようとしていたところ、
玄関チャイムが鳴り、隣のおばあちゃんが登場。
「今日は孫の誕生日。一緒にご飯を食べませんか?」
日本から持参していた女性用手ぬぐいを持って、お宅を訪問。
6歳くらいと15歳くらいの女の子に手渡すと、おばあちゃんは嬉しそうに微笑み、
“どうぞどうぞ”と食卓へ案内してくれました。
床に座り、右手で食べた手作りのビリヤニは、どのレストランよりも美味しかった。
文化も言葉も違う中で、「ご飯を一緒に食べる」ことが、
こんなにも人と人をつなげてくれることを実感しました。
🍻RestBarで歓迎会。そして、整形外科医としての日常が始まる
「おいHiro、RestBar行くぞ」
「RestBarって何?」
「Restaurant & Barだ。いいからバイク乗れ!」
ノーヘルメットでの二人乗りも、すっかり慣れてきました。
その夜は、Gopi先生とMahi先生が歓迎ディナーを開いてくれました。
店では、インドの大学生がよく飲むという**Old Monk(ウイスキー)+Thums Up(コーラ)**を片手に乾杯。
「これはノスタルジックドリンクなんだ」と彼らは笑いながら語ります。
文化に触れ、人に受け入れられ、少しずつ“自分の居場所”ができていく感覚。
心が温まる夜でした。
もちろん食事は手で。
「右手一本でここまで美しく食べられるのか…」
Mahi先生の所作に感嘆しながら、自分も少しずつ手で食べることに慣れてきました。
その夜、Mahi先生が静かに言います。
「感染出たから、明日デブリしてVACするぞ。帰りは23時な」
いよいよ、整形外科医としての“通常運転”が始まります。
🩺次回予告:インド整形外科のリアルな日常へ!
右手で食べるビリヤニ、夜中の外来、そしてチャイでつながる仲間たち。
“普通じゃない日常”を、どうぞお楽しみに!