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手術の費用に関して

臨床大学院 北島 将

  今回は、皆様方からご質問が多い「手術にかかる費用」に関して説明させていただきます。この股関節だよりをご覧になっておられる方は、ほとんどが手術を既に受けられた方だと思いますので、既に過ぎ去ってしまったことになりますが、ご参考になるのではと考えます。佐賀医科大学整形外科(10月から佐賀大学に変更)で行われている手術はいろいろありますが、特に、「人工股関節置換術」と「骨切り術」が多く行われてます。この二つには、大きな違いがあります。簡単に申し上げると、更生医療が受けられるかどうかの違いです。

(1)人工股関節置換術にかかる費用
 負担額には、6900円から全額までの幅があります。
  まず、手術にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?平成14年3月に手術を受けられたO様が手術を受けられるときにかかった手術費や入院費は165万円でした。それを全て負担するとなると大変です。保険の3割負担だと50万円になります。
 人工関節置換術を受けられる患者様は、身体障害の認定が受けられますので、更生医療が申請できます。更生医療の給付を受ける方の負担すべき額は国で決められています。(表1参照)
 「負担額については、当該身体障害者等の属する世帯の前年の所得税額に応じて決定する。その額については身体障害者福祉法施行細則準則で徴収基準額が定められている。」つまり、前の年におさめた所得税に応じて負担額が決められています。20万円の所得税をおさめていると35,000円、40万だと52,000円、100万だと80,000円、400万以上の所得税を納めておられる方は全額負担となります。仮に800万円の収入があられる方は、40万円くらいの所得税を納めることになりますので50,000円ほどの負担になります。参考にしてください。以上の負担額は入院1か月あたりの自己負担限度額になります。また、所得税を課税されない方の負担額は5,000円程度になります。

(2)骨切り術にかかる費用
ご自分の保険での負担となります。
骨切り術の中でも「寛骨臼回転骨切り術」の場合を例にとります。入院期間を31日とした場合に実際にかかる手術費や入院費は100万円ぐらいになります。患者様の負担を3割とすると約30万円の負担となります。更生医療が給付されませんのでご自分での負担となります。保険の種類により、負担額は異なります。

(3)特定疾患での手術の費用
大腿骨頭壊死症の患者様の場合は特定疾患の加療を受けられます。若い方は骨切り術を行われる場合が多く、先ほどの寛骨臼回転骨切り術を受けた場合のご自分の保険での負担とは異なることになります。特定疾患での入院患者の一部負担限度額が2万円程度と定められており、負担額は更生医療と同じように所得税によって異なります。(大腿骨の骨切り術も1か月の入院でおおよそ100万くらいかかります。)
 また、大腿骨頭壊死症の場合は、人工股関節置換術を選択する場合もあります。1998年9月より2000年5月までの当科での調査で、人工股関節置換術を受けた際の平均自己負担額は、特定疾患と更生医療では差を認めませんでした。以上の理由により、受診をされた際に、大腿骨頭壊死症として診断を受けても、人工股関節置換術を選択する場合は、当科では更生医療の手続きをしていただくようにしております。

  手術や入院にかかる費用は、一人一人で若干の違いがあります。同じ人工股関節置換術でも、もともとの脱臼の程度がひどい方や関節を固定しておられた方、両方の手術を受けられる方の場合は入院が長くなります。また、骨切り術の場合は骨移植を行ったりすることで違いが生じます。更生医療も所得に応じて負担額が異なりますので、皆様がまったく同じ金額になることはないかもしれません。手術費は病院間でほとんど変わりはありませんが、入院費は入院期間などで差がでることになります。