明けましておめでとうございます。
ご存知の方も多いと思いますが、佐賀大学は人工股関節置換術の症例数が非常に多い病院です。そのため、他の医療機関で手術の適応がない、合併症が多すぎて手術ができないといった理由で手術を断られた患者さんが多く来られます。そこで、今回の股関節だよりでは少し趣を変えまして、特殊な人工股関節手術の話をさせていただきます。
特殊な人工股関節手術にもいろいろとありますが、今回は骨切り併用人工股関節置換術について書かせていただきます。骨切り併用人工股関節置換術は、主に高位脱臼股という状態の場合に行われます。高位脱臼股とは、股関節が本来の位置よりも上(頭の方)へ位置が変わった状態です。
図1のように、ある程度までの高位脱臼股であれば大きな問題とはなりません。股関節専門医であれば、通常の人工股関節手術が可能です。
(左)中等度の高位脱臼股です。白丸がもともとの股関節の位置です。矢印の方向へ脱臼している状態です。
(右)通常の人工股関節手術が可能です。

(上)高度な高位脱臼股です。白丸がもともとの股関節の位置です。矢印の方向へ脱臼している状態です。
(下)通常の人工股関節手術では対応できないので、骨切り併用人工股関節置換術が行われています。
しかし、図2のように大きく位置が変わってしまった場合には、通常の人工股関節手術はできません。通常の人工股関節の手術ができない理由はたくさんあるのですが、最大の理由は、通常の方法では股関節を元の位置に戻すことができないからです。高位脱臼股の手術のときに一度は戻せる距離は約4cmが限界だといわれています(それ以上、一度に戻すと神経、血管、筋肉が悲鳴をあげてしまいます)。そのため、大きく位置が変わった高位脱臼股に対しては骨切り併用人工股関節置換術を行い、大腿骨を数短くする必要があります。
また、図3のように過去に大腿骨の骨切り術を受けられた方の場合もこのままでは人工関節を挿入できませんので、骨切り併用人工股関節置換術を行う必要があります。しかし、正確な骨切りは非常に難易度が高い手技です。また、この手術が難しいもう一つの理由に、手術そのものが全国的にも非常に少なく、手技を習熟しにくい点が挙げられます。

(左)以前に大腿骨の骨切り術を受けられています。大腿骨が外側に大きく曲がった状態です。
(右)通常の人工股関節手術では対応できないので、<骨切り併用人工股関節置換術>が行われています。
ここまで読んでも、いったいどんな手術なのかピンとこない方が多いと思います。まず、どれくらい珍しいかという点ですが、わかりやすい例を示します。昨年の秋に新潟で日本股関節学会が開催されました。学会にはたくさんのセッションがありますが、そのなかに高位脱臼股のセッションがありました。演題は7つあり、佐賀大学からも発表しました。発表の詳しい内容はさておき、発表された症例数ですが、それぞれ1例、2例、3例、5例、7例、10例、そして佐賀大学は79例でした。一般的にはいかに特殊な手術であるかわかっていただけたでしょうか。
なぜ、佐賀大学ではこの特殊な手術がこれほどたくさん行われているのでしょうか。正直、本当の理由は私にもよくわかりませんが、安定した成績を得ていることが一因になっているのではないかと考えています。
(図4)佛淵教授が正確な骨切りをおこなうために開発された<骨切り併用人工股関節置換術>のための専用器機です。
(図5)<骨切り併用人工股関節置換術>の手順です。絵で書くと簡単そうなのですが、、、、。
この骨切り併用人工股関節置換術を行うにあたって、私たちは様々な工夫をしてきました。もっとも大きな工夫は、図4の器械です。これは、佛淵教授が開発された骨切り併用人工股関節置換術専用の器械です(もうすぐ欧米の人工関節の専門誌に掲載・紹介される予定です)。最近は他の大学病院をはじめとして、あちこちの医療機関からこの器械の使用についての申し込みがあっています。
少し専門的になりますが、この器械の使用法について少しだけ説明させていただきます。骨を切る方法の特徴としては、同じ角度で字に骨を切って骨を短縮し、人工関節を設置します。そのため非常に安定性が高く、歩行訓練も早期から可能になります。
少々わかりにくい内容の股関節だよりとなってしまったかもしれませんが、今回はこれぐらいで終わらせていただきます。佐賀大学整形外科は、一般的な股関節手術はもちろん、他の医療機関で匙をなげられた患者さんにとって最後の砦となる事ができるよう、今年も医局員一同頑張りますのでよろしくお願いいたします。
ご存知の方も多いと思いますが、佐賀大学は人工股関節置換術の症例数が非常に多い病院です。そのため、他の医療機関で手術の適応がない、合併症が多すぎて手術ができないといった理由で手術を断られた患者さんが多く来られます。そこで、今回の股関節だよりでは少し趣を変えまして、特殊な人工股関節手術の話をさせていただきます。
特殊な人工股関節手術にもいろいろとありますが、今回は骨切り併用人工股関節置換術について書かせていただきます。骨切り併用人工股関節置換術は、主に高位脱臼股という状態の場合に行われます。高位脱臼股とは、股関節が本来の位置よりも上(頭の方)へ位置が変わった状態です。
図1のように、ある程度までの高位脱臼股であれば大きな問題とはなりません。股関節専門医であれば、通常の人工股関節手術が可能です。

(左)中等度の高位脱臼股です。白丸がもともとの股関節の位置です。矢印の方向へ脱臼している状態です。
(右)通常の人工股関節手術が可能です。

(上)高度な高位脱臼股です。白丸がもともとの股関節の位置です。矢印の方向へ脱臼している状態です。
(下)通常の人工股関節手術では対応できないので、骨切り併用人工股関節置換術が行われています。
しかし、図2のように大きく位置が変わってしまった場合には、通常の人工股関節手術はできません。通常の人工股関節の手術ができない理由はたくさんあるのですが、最大の理由は、通常の方法では股関節を元の位置に戻すことができないからです。高位脱臼股の手術のときに一度は戻せる距離は約4cmが限界だといわれています(それ以上、一度に戻すと神経、血管、筋肉が悲鳴をあげてしまいます)。そのため、大きく位置が変わった高位脱臼股に対しては骨切り併用人工股関節置換術を行い、大腿骨を数短くする必要があります。
また、図3のように過去に大腿骨の骨切り術を受けられた方の場合もこのままでは人工関節を挿入できませんので、骨切り併用人工股関節置換術を行う必要があります。しかし、正確な骨切りは非常に難易度が高い手技です。また、この手術が難しいもう一つの理由に、手術そのものが全国的にも非常に少なく、手技を習熟しにくい点が挙げられます。

(左)以前に大腿骨の骨切り術を受けられています。大腿骨が外側に大きく曲がった状態です。
(右)通常の人工股関節手術では対応できないので、<骨切り併用人工股関節置換術>が行われています。
ここまで読んでも、いったいどんな手術なのかピンとこない方が多いと思います。まず、どれくらい珍しいかという点ですが、わかりやすい例を示します。昨年の秋に新潟で日本股関節学会が開催されました。学会にはたくさんのセッションがありますが、そのなかに高位脱臼股のセッションがありました。演題は7つあり、佐賀大学からも発表しました。発表の詳しい内容はさておき、発表された症例数ですが、それぞれ1例、2例、3例、5例、7例、10例、そして佐賀大学は79例でした。一般的にはいかに特殊な手術であるかわかっていただけたでしょうか。
なぜ、佐賀大学ではこの特殊な手術がこれほどたくさん行われているのでしょうか。正直、本当の理由は私にもよくわかりませんが、安定した成績を得ていることが一因になっているのではないかと考えています。

(図4)佛淵教授が正確な骨切りをおこなうために開発された<骨切り併用人工股関節置換術>のための専用器機です。
(図5)<骨切り併用人工股関節置換術>の手順です。絵で書くと簡単そうなのですが、、、、。
この骨切り併用人工股関節置換術を行うにあたって、私たちは様々な工夫をしてきました。もっとも大きな工夫は、図4の器械です。これは、佛淵教授が開発された骨切り併用人工股関節置換術専用の器械です(もうすぐ欧米の人工関節の専門誌に掲載・紹介される予定です)。最近は他の大学病院をはじめとして、あちこちの医療機関からこの器械の使用についての申し込みがあっています。
少し専門的になりますが、この器械の使用法について少しだけ説明させていただきます。骨を切る方法の特徴としては、同じ角度で字に骨を切って骨を短縮し、人工関節を設置します。そのため非常に安定性が高く、歩行訓練も早期から可能になります。
少々わかりにくい内容の股関節だよりとなってしまったかもしれませんが、今回はこれぐらいで終わらせていただきます。佐賀大学整形外科は、一般的な股関節手術はもちろん、他の医療機関で匙をなげられた患者さんにとって最後の砦となる事ができるよう、今年も医局員一同頑張りますのでよろしくお願いいたします。