佐賀大学整形外科助手 西田圭介
今回は、佐賀大学整形外科の研究テーマのひとつである股関節と腰の相互関係から、とくに“腰椎変性辷り症(腰の骨がずれている状態)”についてお話させていただきます。

(図1)“腰椎変性辷り症”とは
(図2)”腰椎変性辷り症”の画像検査
“腰椎変性辷り症”は決して珍しいものではなく、股関節の異常の有無にかかわらず数%の方に生じているとされる、とくに中年以降の女性に多い腰の骨の異常です。皆さんのなかにも、腰痛で整形外科や整骨院を受診された際に、腰の骨がずれていますよ。との指摘を受けられた方がいらっしゃると思います。診断は腰のレントゲンを撮影すれば容易ですし、進行すれば触診でも可能です。(図1)
症状として腰痛は必ずしも伴いません。臀部から太ももの痛み、下肢のしびれや筋力低下などが主な症状です。悪性の疾患ではありません。また腰の骨がずれる原因はいまのところ明らかにされていません。 (図2)
(図3)当科での術前のレントゲン評価
(図5)“腰椎変性辷り症”発症メカニズムの仮説
当科では現在、人工股関節全置換術を受けられる患者さんには術前に腰の骨のレントゲン検査を併せて受けていただいています(図3)。その理由のひとつは、股関節と腰の骨は、一方の異常が他方に影響しやすいと考えられており、その確認、評価のためです。たとえば、変形性股関節症の患者さんの場合、股関節の変形や動きの制限のために腰の骨の異常を二次的に生じてしまうことが考えられるのです。
私たちは、腰の骨のレントゲン評価から、変形性股関節症の患者さんには“腰椎変性辷り症”の合併率が高いことに気付きました。当科の調査では人工股関節全置換術を受けられる予定の女性患者さんの約30%に“腰椎変性辷り症”が認められました。(図4.女性患者さんにおける人工股関節全置換術々前の“腰椎変性辷り症”の有無)
私たちは“腰椎変性辷り症”発症のメカニズムについて、以下の仮説を立てています。(図5)
(1)変形性股関節症の患者さんでは股関節の動きが制限される。
(2)日常生活における、とくに前かがみの動作で、股関節の動きの制限された分を腰の動きで補う必要が生じる。
(3)腰の骨は、ストレスが繰り返し加わることで、次第に配列の異常をきたす。
もしこの仮説が正しければ、変形性股関節症の患者さんが人工股関節全置換術により股関節の動きを取り戻されることで、“腰椎変性辷り症”を生じる危険性も減らせると期待できます。この仮説を確認するため、また早期に腰の骨の異常を発見するためにも、股関節疾患をお持ちの患者さんや既に人工股関節全置換術を受けられた患者さんでは、股関節だけに限らず腰の骨の長期的な評価も併せて行うことが大切と考えています。
“腰椎変性辷り症”の診療はお近くの整形外科医師にご相談されても結構ですし、佐賀大学整形外科では脊椎(背骨)外来も股関節の外来日と同じ月曜日、金曜日に受け付けておりますので、腰に限らず背骨ついてご心配されている方はご遠慮なく受診されて下さい。
今回は、佐賀大学整形外科の研究テーマのひとつである股関節と腰の相互関係から、とくに“腰椎変性辷り症(腰の骨がずれている状態)”についてお話させていただきます。

(図1)“腰椎変性辷り症”とは
(図2)”腰椎変性辷り症”の画像検査
“腰椎変性辷り症”は決して珍しいものではなく、股関節の異常の有無にかかわらず数%の方に生じているとされる、とくに中年以降の女性に多い腰の骨の異常です。皆さんのなかにも、腰痛で整形外科や整骨院を受診された際に、腰の骨がずれていますよ。との指摘を受けられた方がいらっしゃると思います。診断は腰のレントゲンを撮影すれば容易ですし、進行すれば触診でも可能です。(図1)
症状として腰痛は必ずしも伴いません。臀部から太ももの痛み、下肢のしびれや筋力低下などが主な症状です。悪性の疾患ではありません。また腰の骨がずれる原因はいまのところ明らかにされていません。 (図2)

(図3)当科での術前のレントゲン評価
(図5)“腰椎変性辷り症”発症メカニズムの仮説
当科では現在、人工股関節全置換術を受けられる患者さんには術前に腰の骨のレントゲン検査を併せて受けていただいています(図3)。その理由のひとつは、股関節と腰の骨は、一方の異常が他方に影響しやすいと考えられており、その確認、評価のためです。たとえば、変形性股関節症の患者さんの場合、股関節の変形や動きの制限のために腰の骨の異常を二次的に生じてしまうことが考えられるのです。

私たちは“腰椎変性辷り症”発症のメカニズムについて、以下の仮説を立てています。(図5)
(1)変形性股関節症の患者さんでは股関節の動きが制限される。
(2)日常生活における、とくに前かがみの動作で、股関節の動きの制限された分を腰の動きで補う必要が生じる。
(3)腰の骨は、ストレスが繰り返し加わることで、次第に配列の異常をきたす。
もしこの仮説が正しければ、変形性股関節症の患者さんが人工股関節全置換術により股関節の動きを取り戻されることで、“腰椎変性辷り症”を生じる危険性も減らせると期待できます。この仮説を確認するため、また早期に腰の骨の異常を発見するためにも、股関節疾患をお持ちの患者さんや既に人工股関節全置換術を受けられた患者さんでは、股関節だけに限らず腰の骨の長期的な評価も併せて行うことが大切と考えています。
“腰椎変性辷り症”の診療はお近くの整形外科医師にご相談されても結構ですし、佐賀大学整形外科では脊椎(背骨)外来も股関節の外来日と同じ月曜日、金曜日に受け付けておりますので、腰に限らず背骨ついてご心配されている方はご遠慮なく受診されて下さい。