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佐賀大学名誉教授(前整形外科主任教授)

馬渡 正明

  • [ 出身地 ]

    佐賀県

  • [ 趣味 ]

    ガーデニング(福岡市 第13回 花と緑のまちづくり賞)

  • [ 診療キーワード・研究テーマ ]
    • 股関節外科
    • 人工股関節
    • 骨切り術
    • 抗菌インプラント
  • [ 学歴 ]
    昭和52年3月 佐賀県立鹿島高等学校卒業
    昭和58年3月 九州大学医学部卒業
    昭和59年4月 九州大学大学院医学研究科外科系専攻入学
    昭和63年3月 九州大学大学院医学研究科外科系専攻修了
    学位取得(医学博士)
  • [ 経歴 ]
    昭和58年5月 九州大学医学部付属病院整形外科研修医
    昭和63年4月 日本学術振興会特別研究員
    平成3年9月 米国スタンフォード大学研究員(整形外科学)
    平成6年6月 九州大学医学部整形外科助手
    平成9年7月 九州大学医学部講師
    平成9年12月 福岡整形外科医長
    平成17年1月 佐賀大学医学部人工関節学講座助教授
    平成18年4月 佐賀大学医学部整形外科助教授
    平成19年4月 佐賀大学医学部整形外科准教授
    平成22年3月 佐賀大学医学部整形外科教授
    平成24年4月 佐賀大学医学部附属病院 病院長特別補佐
    平成26年4月 佐賀大学医学部付属病院 副病院長(経営担当)
    手術部長(平成28年3月まで)
    令和6年3月 佐賀大学医学部整形外科 教授退任
    令和6年4月 整形外科LYFART 院長就任
  • [ 取得資格 ]
    • 医学博士(九州大学) 日本整形外科学会認定専門医
ご挨拶

佐賀大学整形外科教室のホームページにアクセス下さり、ありがとうございます。この場をお借りしてこれまでの教室の歩みをご紹介したいと思います。

佐賀医科大学整形外科は昭和54年(1979年)4月に熊本大学から渡辺英夫教授が赴任され、開講されました。開学当時の佐賀医科大学は大講座制で、整形外科は外科学講座の一部門としてスタートしています。またリハビリテーション科と形成外科は整形外科の講座内に位置付けられていました。新設医科大であったため、開講当時はソフト、ハード両面でご苦労があったようですが、黎明期の基盤作りがなされました。

平成10年(1998年)9月に九州大学から佛淵孝夫教授(前佐賀大学長:平成27年9月に退官)が赴任されました。それから佐賀大学整形外科(は大きく飛躍することになりました。それまで200~300例の年間手術症例が急増し,退官前の平成21年には1000例に迫る数になっています。

臀筋内脱臼股や強直股といった従来では手術適応とならなかった特殊な症例に対して積極的に手術を行い、そのすぐれた治療成績を報告してきました。その結果全国から数多くの患者さんが佐賀大学病院を受診することになり、股関節疾患治療のメッカと認知されたと考えています。「股関節便り」という患者向けの情報誌を発刊し、現在では第32号を数えることになりましたが、こうした取り組みを大学の医局が行っているところはないと自負しています。8000部以上を、手術をうけた患者さんや紹介を受けた病院、医院に郵送しています。このホームページでも公開していますので、ぜひご覧下さい。

佛淵先生の数多くのご業績の中で特筆すべきは手術症例のデータベース化です。今でこそ電子カルテ時代となり、症例の解析は楽になっていますが、紙カルテの時代は、特に症例数が増えれば、データ収集に多くの時間が割かれることになります。時代を先取りした試みであり、教室員の学会発表に大いに寄与しています。平成30年5月末時点で、人工股関節置換術(THA)8906症例、人工膝関節置換術(TKA)2549症例、股関節骨切り術症例948名等画像を含めた詳細なデータが蓄積されており、日々更新されています。

平成15年10月に佐賀医科大学は佐賀大学と合併し、佐賀大学医学部となり、その後16年4月には大学は法人化されました。平成17年1月に日本メディカルマテリアル社(現京セラ株式会社)の寄付講座である人工関節学講座が開講し、その助教授として私が九大より赴任しました。京セラ(株)には以来現在まで寄付を継続していただいており、人工関節に関わる様々な問題に対し、研究を続けています。平成17年4月には外科大講座制が廃止され、ようやく整形外科学講座となりました。そして平成21年10月に佛淵教授が佐賀大学学長に就任されました。弱冠57才の、現役バリバリの整形外科教授からの転身でした。平成22年3月より私が第3代目の教授に就任しました。

老朽化が進んだ大学病院はこの平成22年から再開発が始まり、8年経過した現在も継続中です。病棟は新病棟となり、6階の東西両病棟が整形外科病棟になりました。6階西病棟が37床で関節外科センターとして主に人工関節置換術の患者さんを治療する病棟です。6階東病棟が21床で主に骨切り術や背椎疾患の患者さんを治療する病棟です。以前よりも個室の数が増え、また7階には個室専用の病棟があり、さまざまなニーズに対応できるようになりました。中央部門には新しい検査室と14室の部屋を持つ手術場が完成し、供用されています。ダヴィンチを使ったロボット手術などを行う内視鏡専用室(2室)、ハイブリッド手術室(1室)、クリーンルーム(4室)などが完備され、また将来術中MRIが撮影できるように設計しています。

さて、教室の現状についてお話ししたいと思います。前教授時代は、佐賀大学整形外科は下肢関節外科に特化して診療を行い、脊椎、肩、手外科、外傷、腫瘍は周辺関連病院で行うよう、機能分担していました。佐賀モデルともいうべき斬新な試みであったと思います。しかし大学病院救命部の設置による外傷症例の急増、重篤な合併症をもつ患者や透析患者への手術、あるいは骨転移症例など、大学でしか扱えない患者へ対応するために、現在では概ね整形外科疾患の治療に対処できるように努めています。もちろん股関節外科は教室のメインであり、現在でも年間600例の手術を行っています。この数は国立大学病院では圧倒的であり、膝関節外科症例を合わせると約1000症例の手術を毎年行っています。私自身が学内外あわせて年間600例以上の手術を執刀しています。スタッフは教授以下准教授1名、講師2名、助教6名、寄付講座准教授1名、講師1名の、わずか12名の小所帯で年間1500例の手術をこなしていますので、毎日がかなり忙しい状況です。

余談ですが、平成23年の診療報酬請求単価(入院)が全国国立大学整形外科で第1位でしたので、これは教室員の励みにもなりましたし、私も教室員に感謝しているところです。さらに余談ですが、佐賀大学病院は全国に先駆けてリスクを伴う処置行為に対し、個人にインセンティブを支払います。例えば手術をすれば術者に手術点数の5%、助手3人まで1%を支給します。整形外科は当然のことながら、これまで支給額第1位でした。リスクを避ける外科系離れに対して、魅力アップにつながるいい制度だと思いますし、すべての病院で採用されるべきだと思います。本題に戻ります。様々な疾患を大学で治療するメリットですが、多種多様の手術がなければ学部学生の教育にも支障をきたしますし、なにより整形外科の魅力を伝えることは困難です。前期研修で整形外科を選択してくれる研修医が徐々に増えてきているのも、いい影響が出てきているのではないかと思っています。

整形外科の一日は早朝7時半に始まります。月曜から金曜まで毎朝教授回診をします。月曜日は回診後その週の術前カンファレンスを行い、9時から外来が始まります。手術は午前午後1列で行い、午後6時から抄読会があります。火曜日は朝から2列で一日中手術です。水曜は午前外来と朝から1列で午後まで手術、木曜日はまた朝から2列で1日中手術です。金曜日は朝の回診後その週の術後カンファレンス、学生のプレゼンテーションがあり、9時から午前中は外来と、手術は午前午後1列で手術を行います。それで週平均25例の手術症例をこなしています。

研究に関しては、臨床研究を主体にやっていますが、特に力を入れているのが3次元動作解析装置(VICON)を用いた3D歩行解析です。歩行時の全身の関節可動域がダイナミックに計測でき、術前後での変化など、新しい知見が得られています。また産総研と共同して、正常歩行を含めた歩行のビッグデータ解析を今後行う予定にしています。この歩行解析により、術後のリハビリテーションはもちろん、運動器疾患の早期診断や予防といった応用まで進めていければと考えています。基礎系では私が佐賀大学に赴任して以来続けている研究テーマが抗菌インプラントの開発であり、これは大学のメインテーマの一つです。現在の仕様は無機銀の抗菌性を利用したインプラントで、研究スタートから10年を経過し、平成28年4月には臨床で使えるようになりました。

人工関節置換術における重要な合併症の一つが感染症ですので、このインプラントが感染のリスクを減らしてくれれば、臨床的には大きな福音となると考えています。産学連携が結実し、努力が報われました。また当然ながら体内に用いられる様々なインプラントが抗菌化されるべきですし、将来的にはそんな時代になると考えています。現在脊椎領域や骨接合材などに応用できるように研究を進めています。この抗菌性インプラントの開発に対し、第30回先端技術大賞特別賞、平成28年度人工臓器学会技術賞、さらに平成30年2月には経産省から「第7回ものづくり大賞・特別賞」を受賞することができました。他にも基礎講座と共同して、骨代謝の基礎的研究や骨腫瘍に関する研究も行っています。

最後にここまで読んでくれた初期研修医の皆さん、私たちが抱える最大の問題はなんといっても人手不足です。整形外科のニーズは他科の比ではありません。超高齢化社会の現代において、運動器疾患を扱う整形外科医は本当に求められています。もちろんスポーツ障害・外傷などは年齢を問いませんし、関節リウマチや変形性関節症、骨粗鬆症などは基礎的研究もこれからです。若い人の力でこれからの整形外科医療を革新的に進めてほしいと思います。佐賀大学整形外科は小さな教室ですが、アットホームで、みんなの顔が見える、面倒見がいい教室です。関連施設でも最低年100例以上の執刀が経験できるプログラムを準備しています。福岡から近い佐賀で一緒に頑張ってくれる先生募集中です。新しくなった佐賀大学病院で一緒に働きませんか?