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自己血輸血について

臨床大学院  肥後 たかみ

  第3号で自己血輸血についてお話しましたが、今回は少しずつ変化している点がありますので、現在までの流れをお話したいと思います。
 前回の分を少しおさらいしますと、当科では人工股関節置換手術の患者さんを対象に、手術の約3週前に外来で400ml自己血貯血し、手術後に自己血輸血(返血)をしてきました。対象となる患者さんは、原則として70歳以下、貧血がないこと(ヘモグロビン10以上)が目安です。その後、状態に応じて、70歳以上の方にも行うようになりました。
手術では、大きな骨を切るため出血が多くなりますが、手術中より手術後に多くなります。この出血量をできるだけ減らすために、貯血した自己血から血を止める作用のあるフィブリンという成分を取り出し、手術時にフィブリン糊として人工関節を入れる部分に使用する(塗る)ということを行いました。すると、使用しない場合と比較し、出血量を牛乳瓶約1本分少なく抑えることができました。その後、家庭でも消毒に使うオキシドールをふりかけることにより、出血量を減らせそうなことがわかりました。
 以上のようなデータをもとに、これから手術予約をされる患者さんでは、原則として出血量が多いことを予測できる患者さんのみを対象に、自己血貯血を行うことになりました。
 出血量が多いタイプには、主に①変形性股関節症で骨がたくさんできるタイプ(骨頭の部分)②骨がスカスカなタイプ(大腿骨)があります。①では総出血量で牛乳瓶1.5~2.5本、②では牛乳瓶約1.5本分他のタイプ(出血量が少ないタイプ)より多いというデータがでています。その他、再置換術(人工関節にゆるみがでて、入れ替えを必要とする時)、人工股関節置換手術に加え、骨切り併用する場合(脱臼の程度や骨の形により、矯正を必要とする時)等が出血量が多くなります。
 このように、出血量を予測でき、出血量を減らす工夫により、自己血貯血も減らすことができそうです。まだまだ説明が不十分な点があると思いますが、ご質問等ございましたら、ご遠慮なくお尋ねください。