臨床大学院 北島 将
第6回と第9回で脱臼防止の話を、第11回で脱臼の頻度の話をしましたが、今回は、人工股関節によい立ち上がり方を重点的に説明させていただきたいと思います。
二つのテーマでお話致します。
①「足を広げなさい!」は正しいの?
肩の脱臼とかのお話は皆様も耳にされたことがおありだとは思いますが、関節に脱臼はつきものなのです。人工関節は正常の関節よりも、構造的にさらに脱臼しやすくなっています。(脱臼しない人工関節の開発は日々研究が進んでおります。)人工関節はいついかなる時も脱臼する危険があるかというとそうではありません。脱臼する可能性がある方は、ほとんどは半年以内に起こります。半年を過ぎると脱臼の危険性は減り、3年経過するとほとんど脱臼の危険性はありません。半年以上経過して脱臼する場合は、転倒などの不慮の事故にあったときです。
では、脱臼しやすい姿勢とはどんな姿勢なのでしょうか。これについては、第6回と第9回で詳しく述べていますのでご参照ください。今回は、脱臼防止のために皆様が一度は耳にしたことがある「足を広げてください。」の意味についてお話いたします。
皆様も少しやってみてください。まず、いすに座った状態で足を広げてみてください。どうですか。図1と比べてみてください。足先が広がって、膝は閉じたままではないでしょうか?足を広げるといったときに、女性の場合は、図1のような広げ方をするのが普通です。しかし、人工関節によい足の広げ方は、両足の踵かかとをつけた状態で広げる、いわゆる女性にとったら行儀が悪い姿勢なのです。よいお手本は図2のような姿勢になります。踵をつけた状態では、人工関節が脱臼することはほとんどありません。脱臼をしやすいのは、トイレで立ち上がった時や、お風呂で立ち上がった時などが多いのですが、その場合、膝はついたまま、足首が広がるような姿勢になります。(内旋といいます。)立ち上がる時には出来るだけ踵をつけて膝を広げるようにして立ち上がるように意識していただくことが大切だと考えています。結論は、「足を広げてください。」は正しいのですが、踵かかとをつけて足を広げるような姿勢が、人工関節にはよい姿勢です。

②立ち上がる時の足の位置はどうしてますか?
椅子から立ち上がる時は皆様どうされていますか?さて、まず立ってみてください。どうですか?ほとんどの方はスムーズに立ち上がれたことだと思います。今度は、踵を椅子の下にいれるような気持ちで、できるだけ足を椅子に近づけて立ってみてください。どうですか。立ち上がり方に変化はありましたか?普通の位置での立ち上がり方を図3、踵かかとを引いた位置での立ち上がりを図4で示します。踵かかとを引いた状態で立つほうがスムーズに立ち上がれます。股関節が曲がらずに(前にお辞儀をせずに)立ち上がれます。皆様はされなくて結構ですが、踵かかとを前に出した状態での立ちあがり方を図5で示します。図5の状態では、立ち上がる時に反動をつけないと立ち上がれませんから、一度お辞儀をしたような姿勢になります。つまり、脱臼をしやすいような姿勢になってしまいます。この立ち上がりは椅子からだけではなく、畳の上からや、お風呂からも同じです。できるだけ、踵かかとを後ろに引いた状態で立ち上がるように意識をしていただくことが大切だと考えています。

今回は、「足の広げ方」「立ち上がり方」の二つのテーマでお話を致しました。言いかえれば、足の広げ方=踵かかとの横の位置、立ち上がり方=踵かかとの縦の位置といったことになります。踵かかとの正しい位置が今回の脱臼予防のポイントでした。皆様がこれからも、快適な日常生活ができるよう、手術後のサポートをしていきたいと考えております。
第6回と第9回で脱臼防止の話を、第11回で脱臼の頻度の話をしましたが、今回は、人工股関節によい立ち上がり方を重点的に説明させていただきたいと思います。
二つのテーマでお話致します。
①「足を広げなさい!」は正しいの?
肩の脱臼とかのお話は皆様も耳にされたことがおありだとは思いますが、関節に脱臼はつきものなのです。人工関節は正常の関節よりも、構造的にさらに脱臼しやすくなっています。(脱臼しない人工関節の開発は日々研究が進んでおります。)人工関節はいついかなる時も脱臼する危険があるかというとそうではありません。脱臼する可能性がある方は、ほとんどは半年以内に起こります。半年を過ぎると脱臼の危険性は減り、3年経過するとほとんど脱臼の危険性はありません。半年以上経過して脱臼する場合は、転倒などの不慮の事故にあったときです。
では、脱臼しやすい姿勢とはどんな姿勢なのでしょうか。これについては、第6回と第9回で詳しく述べていますのでご参照ください。今回は、脱臼防止のために皆様が一度は耳にしたことがある「足を広げてください。」の意味についてお話いたします。
皆様も少しやってみてください。まず、いすに座った状態で足を広げてみてください。どうですか。図1と比べてみてください。足先が広がって、膝は閉じたままではないでしょうか?足を広げるといったときに、女性の場合は、図1のような広げ方をするのが普通です。しかし、人工関節によい足の広げ方は、両足の踵かかとをつけた状態で広げる、いわゆる女性にとったら行儀が悪い姿勢なのです。よいお手本は図2のような姿勢になります。踵をつけた状態では、人工関節が脱臼することはほとんどありません。脱臼をしやすいのは、トイレで立ち上がった時や、お風呂で立ち上がった時などが多いのですが、その場合、膝はついたまま、足首が広がるような姿勢になります。(内旋といいます。)立ち上がる時には出来るだけ踵をつけて膝を広げるようにして立ち上がるように意識していただくことが大切だと考えています。結論は、「足を広げてください。」は正しいのですが、踵かかとをつけて足を広げるような姿勢が、人工関節にはよい姿勢です。

②立ち上がる時の足の位置はどうしてますか?
椅子から立ち上がる時は皆様どうされていますか?さて、まず立ってみてください。どうですか?ほとんどの方はスムーズに立ち上がれたことだと思います。今度は、踵を椅子の下にいれるような気持ちで、できるだけ足を椅子に近づけて立ってみてください。どうですか。立ち上がり方に変化はありましたか?普通の位置での立ち上がり方を図3、踵かかとを引いた位置での立ち上がりを図4で示します。踵かかとを引いた状態で立つほうがスムーズに立ち上がれます。股関節が曲がらずに(前にお辞儀をせずに)立ち上がれます。皆様はされなくて結構ですが、踵かかとを前に出した状態での立ちあがり方を図5で示します。図5の状態では、立ち上がる時に反動をつけないと立ち上がれませんから、一度お辞儀をしたような姿勢になります。つまり、脱臼をしやすいような姿勢になってしまいます。この立ち上がりは椅子からだけではなく、畳の上からや、お風呂からも同じです。できるだけ、踵かかとを後ろに引いた状態で立ち上がるように意識をしていただくことが大切だと考えています。

今回は、「足の広げ方」「立ち上がり方」の二つのテーマでお話を致しました。言いかえれば、足の広げ方=踵かかとの横の位置、立ち上がり方=踵かかとの縦の位置といったことになります。踵かかとの正しい位置が今回の脱臼予防のポイントでした。皆様がこれからも、快適な日常生活ができるよう、手術後のサポートをしていきたいと考えております。