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佐賀大学医学部 臨床大学院班
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「骨代謝」「再生医療」「抗菌インプラント」のフロンティアへ

骨代謝の研究では、骨吸収と骨形成のバランスに関わる分子機構を明らかにし、骨粗鬆症などの骨代謝疾患の機序解明や、新たな治療法の開発を目指しています。破骨細胞や骨芽細胞の機能を制御する因子に着目し、細胞実験や動物モデルを用いた解析を進めています。

再生医療の分野では、幹細胞や生体材料を用いた骨・軟骨組織の再生研究を行っています。3Dスキャフォールド(3次元細胞足場材)を用いた組織工学的手法により、骨折や難治性の骨欠損に対する治療法の確立を目指しています。将来的には再生医療製品の臨床応用へとつなげることを視野に入れています。(画像①)

抗菌インプラントの研究では、インプラント手術後の感染を予防するための抗菌表面処理や抗菌性材料の開発に取り組んでいます。企業との共同研究では、細菌のバイオフィルム形成を防ぎつつ、骨との結合性を維持する銀含有ハイドロキシアパタイトコーティング技術により、世界初の抗菌人工股関節の開発に成功しました。(画像②)

当教室には海外留学の経験が豊富な2名の指導医が在籍しており、国内外の研究機関との共同研究も積極的に行なっております。長年にわたる研究経験と幅広い知見を活かして、研究の方向性や論文作成に関するアドバイスを行なっています。(画像③)

私たちは、分子生物学、組織工学、材料科学など多様な分野の知見を融合し、医療の未来に貢献する革新的な研究を目指しています。基礎から応用へ、そして臨床へとつながる医学研究を、少人数ながらも精力的に推進しています。

① 骨欠損モデルマウスの治癒過程

② 抗菌人工股関節 AG-PROTEX

③ ラボメンバー

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研究の最前線は、再生医学研究センターにも

整形外科の大学院生は、医学部附属再生医学研究センターでも研究をしています。再生医学研究センターには、細胞のみで様々な立体構造体を作製することができる、バイオ3Dプリンタがあります。私たちはバイオ3Dプリンタを用いて、整形外科領域の疾患について新たな治療法を開発する研究を行っています。

軟骨再生の研究
現在、変形性関節症などによって関節軟骨が大きく欠損した場合、人工関節置換術が主な治療法です。しかし、人工関節には経年劣化や感染リスクなどの課題があります。

そこで、バイオ3Dプリンタで軟骨を作製する研究を行っています。脂肪組織のから様々な組織に変化できる能力を持つ細胞を採取し、この細胞から生体由来の軟骨さながらの厚みや、強度、生物学的特徴を持つ軟骨構造体をバイオ3Dプリンタで作製しました。この研究の成果は Journal of Orthopaedic Surgery and Research 誌に掲載されました。
Bio-3D printing of scaffold-free ADSC-derived cartilage constructs comparable to natural cartilage in vitro | Journal of Orthopaedic Surgery and Research | Full Text

更に、バイオ3Dプリンタで作製した軟骨を動物へ移植する研究も行いました。ヒトのiPS細胞からバイオ3Dプリンタを使用してチューブ状の軟骨軟組織を作製します。次に作製した組織を切り開いてシート状にし、ミニブタの膝関節に作製した骨軟骨欠損部へ移植しました。移植した軟骨シートにより、軟骨組織の再生が促進されることが示されました。この研究の成果は Regenerative Therapy 誌へ掲載されました。
Xenograft of bio-3D printed scaffold-free cartilage constructs derived from human iPSCs to regenerate articular cartilage in immunodeficient pigs - ScienceDirect

骨再生の研究
多くの骨折は固定することで癒合が得られるものの、交通事故や感染などで、骨組織が大きく欠損した場合には、自然治癒しません。現在、患者自身から骨を採取して、欠損部へ移植する自家骨移植が行われていますが、骨を採取した部位の骨折や神経損傷などが問題となっています。

私たちは、バイオ3Dプリンタで作製した細胞構造体を骨欠損部へ移植することで、骨欠損の治癒を促進させる研究を行っています。具体的には、皮下脂肪など、体への負担が少ない場所から様々な組織に変化できる能力を持つ細胞を採取します。そして、バイオ3Dプリンタを用いて、細胞のみで本物の骨に類似した構造を持つ立体的な構造体を作製します。

将来的には、患者さん一人ひとりに合わせた「オーダーメイドの骨」をつくりだし、より安全で効果的な骨移植治療を実現することを目指しています。

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受賞歴

  • 2016年 第30回先端技術大賞 特別賞 「抗菌性人工股関節の開発」
  • 2016年 2016年度日本人工臓器学会 技術賞「抗菌性人工股関節 (商標:AP-PROTEX)」
  • 2017年度 第72回日本セラミックス協会 技術賞「抗菌性人工股関節(AG-PROTEX™)の開発」
  • 2018年 第7回ものづくり日本大賞 特別賞「世界初の抗菌性人工股関節の開発」
  • 2019年 第13回 ふくおか 臨床医学研究賞「銀-ハイドロキシアパタイトを表面加工した脊椎椎体間ケージの開発」
  • 2020年 文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門
  • 2021年 全国発明表彰「日本弁理士会会長賞」
  • 2024年 日本バイオマテリアル学会賞(技術)受賞(AG-PROTEX™)

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