上肢班医局紹介

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概要
人間は進化とともに2足歩行をはじめ、上肢を自由に使えるようになったことで道具を作り、また使用することで文明を築きあげてきました。現代社会においても携帯電話、パソコンは私たちの生活には必需品であり、その操作には手先の動作は欠かせません。このため上肢に障害が生じた場合、様々な場面において支障が生じることになります。
上肢の回復に対し、機能解剖学および生理学の知識だけではなく各疾患により生じる症状に応じた疼痛や可動域制限の改善を得るため、適切な時期に適切な治療が必要となります。特に手の外科には複雑な解剖の熟知と顕微鏡を使った神経・血管縫合などの手術手技の獲得が必要です。そのため日本手外科学会は「手外科専門医」制度を設けています。
現在、佐賀大学上肢班は手外科専門医である園畑が手・肘関節疾患を泉が肩関節疾患を担当させていただいております。基本的な治療方針ですが、個々の患者様に合わせた治療を患者様自身と十分話し合いながらすすめていきます。その中で手術治療、保存加療を決定します。保存療法(リハビリテーション・投薬加療など)は上肢疾患の治療において重要な位置を占めており、近隣の病院と連携しながら診療を行っています。保存療法で改善が得られない場合には手術を考慮し、侵襲の少ない関節鏡や人工関節などによる手術を積極的に取り入れています。
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研修目標
① 解剖
- 肩関節、肘関節、手関節のアプローチ
- 上肢神経の走行、神経支配
② 上肢疾患の理解
- 上肢絞扼性疾患(手根管症候群、肘部管症候群、胸郭出口症候群など)
- 手指変形性関節症(Heberden結節、Bouchard結節、母指CM関節症)
- 変形性肘関節症
- 上腕骨外側上顆炎
- 変形性肩関節症
- 肩腱板断裂
- 石灰沈着性腱板炎
- 反復性肩関節脱臼
- 外傷(上腕骨近位端骨折、橈骨遠位端骨折、切断指など)
③ 画像診断
- 単純レントゲン、CT、MRI、超音波検査
④ 術前計画
- 人工肘関節、肩関節の設置位置、sizng
⑤ 手術手技
- 肩関節鏡、マイクロサージャリーなど
⑥ 学術活動
- 学術発表を年1回以上、論文執筆を年1本以上行えるように指導します
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手術実績、代表症例
[上肢人工関節手術症例]

上肢人工関節は肩・肘・手指関節におこなわれております。下肢関節とは違い体重のかからない関節ですので、痛みをとるだけではなく関節の動きを改善し、関節の機能をよくする目的で手術を行っております。人工肩関節は解剖学的な人工関節だけではなく、腱板機能不全の患者様に対しては反転型の人工肩関節を用い機能改善を目指しております。




人工肘関節置換術


手指人工関節置換術(MP関節)

人工肩関節置換術(解剖学的)

人工肩関節置換術(反転型)
[手外科手術症例]

手根管症候群や肘部管症候群などの絞扼性神経障害に対する手術を行っております。圧迫された神経の除圧を行うことで症状の改善を図ります。上肢のしびれや痛みは頸椎疾患によるものもありますので、脊椎グループと協力して正確な診断、的確な治療をおこなっております。また、神経麻痺などで動かなくなった手指や手首を他の部位の腱や筋肉を移行することにより、再度動くようにする筋腱移行術もおこなっております。
その他には切断指再接合をおこなっております。切断された血管、神経、腱をマイクロサージャリー(顕微鏡拡大下の手術)の技術を使って接合しております。
[肩関節鏡手術症例]

肩関節鏡手術は腱板断裂に対する鏡視下腱板断裂手術を最も多く行っております。また反復性肩関節脱臼に対しては鏡視下Bankart法を行っております。肩甲骨骨折に対しても積極的に関節鏡手術を用い、低侵襲手術を心掛けております。


鏡視下腱板修復術


鏡視下Bankart